最近余所余所しくないかと言われて、子義は返す言葉が無かった
事実ここ数日飲みの誘いを断っていたし鍛錬の後もそそくさと宅へ戻っていたのだから、何言い訳をすることもなく謝罪を述べた
しかし周泰は不満げな顔
謝罪を望んでいるわけではないということは一目瞭然、勿論子義もそれを理解してはいた
求められているのは理由と、共に過ごす時間だろうと

「周泰殿、」
「…なんだ」

子義はいまいち踏み切れずに居た
言うべきなのだろうか、言うべきなのだ、自分にいいきかせてもその背中を押し切れない
対して周泰も鬼ではなく、無理矢理に訊こうとはしない
其の優しさが互いを苦しめているのだと解っていても、相手の意思を尊重したいと想うが故
気まずい沈黙、視線すら交わらないままに一方は掌を握ってはひらいてもう一方はそれを唯見つめていた

「にゃあ」

と、静寂を破ったのは小さな小さな鳴き声で、足元を見れば其処には灰色の猫が一匹

「あ、こら!暁!」
「…暁…?」

しまった、と子義が顔を赤くするのが早いか
みゃあ、ともう一度小さな声に振り返れば其処には黒い猫が一匹
大きさも目つきも似た鳴き声ばかり僅かに違う二匹の猫はおそらく兄弟か、ならば飼い主は同じだろうか
考え付いた先、頭に浮かんだ一文字は高確率でこの子の名

「…宵、か…?」

呼べば黒猫は嬉しそうに、みゃあと一声眼を細めて周泰の足に擦り寄った(甘えるような動作に未だ幼いことがわかる)
後ろ足に巻かれた白い布が黒い毛並みによく映えているなと思ったが、灰猫の足にそれはない
それはつまり飾りではない事を示す

「そ、の」
「…怪我を、しているな…」
要は、拾った猫の手当てをしていたと
幼猫の体調を気遣って早々に帰っていたのだろうと問えば頬を赤くしたまま子義はこくりと頷いた
嫌われたわけでも避けられていたわけでもない事に対して一安心
それでも未だ胸に残るしこり

「…何故」
「いえ、その…名前が…」

相談してくれたなら手伝うことも出来ただろうにと
問いかける周泰に、子義は顔を一段と赤くして全てを話し始めた
目つきの鋭い二匹の猫を拾ったその時、思いついた名は周泰の愛用している弧刀の名で
定着した頃になって感じた羞恥心
正面切って打ち明ける勇気などなくずるずると隠して過ごしていた、と
しかしそれで周泰殿に不快な思いをさせてしまい申し訳ない、と
今にも泣き出してしまいそうなほど切羽詰まった様子に、何あやす言葉をかけられる周泰でもなく

「…暁」

にゃあ

「宵…」

みゃあ

「…子義」
「は、はい」

名を呼んで、抱き締めた
あぁこの温もりは何日ぶりだろうかと、思ったのはひとりに非ず

「…すまなかった…」
「周泰殿が謝ることな

ど、
呑まれたものは唯一音
されど其れを聞く時間も惜しいと言わんばかりにふさがれた唇
噛みつくような口付けに驚き弛んだそこへ、ぬるり入り込んできた舌は熱い(こうも熱いものだったか、なんてふり返る余裕も無い)

「ッふ…ぁ……幼平…」
「…すまない」

苦しかったかと気遣う視線が(些か弱気な声色が)、あまりにも優しくて笑ってしまった
せっかちで、やさしくて
誰よりも自分を愛してくれる、誰よりも愛しい人


連想ゲェム


真似るように口を寄せ合い身体を摺り寄せる二匹の姿は、あぁ
まるで我が子のようではないかと(そんな事言えるはずもないけれど、けれど、)



2011.5.25


がめおべら。の功様から相互リンクのお礼に頂きました!泰太ですよ!功さんの!泰太!です!よ!
「なにかリクがあれば」というお言葉に甘えまくって、泰太をリクさせて頂いたら……俺、悶絶死。
子義とぬこの組み合わせの可愛さに先ず破顔。怪我したぬこをほっとけなかったり、そのぬこに幼平に因んだ名前をつけたり、いざ本人目の前にしたら恥ずかしさでどうしようもなくなったり…
と、子義らしさが全開で、幼平でなくともむぎゅーっと抱きしめたくなりますよ(*´Д`*)ちゅぅしてぇ!!←
読み返す度に顔がニヤけて仕方ないですウォオオオオオオオオッ!!

功さん、素敵な小説をありがとうございましたー!
これからも宜しくお願いします(*´◇`*)